暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
配属された騎士団
自分で思っていたよりも五日間という期間は案外あっという間で、気が付けば入団初日を迎えていた。
「グラントおはよ~う!」
「……おはよ」
朝からテンションが謎に高いライを横目に、空いた列に適当に並ぶ。
月の初めは外にある訓練場で朝礼を行うらしく、騎士の制服に身を包んだ者達が長い列を作っていた。
恐らく団によって並ぶ場所は違うのだろうが、新人で団さへまだ指定を受けていない俺たちはただ後ろの方で適当に並ぶしかない。
「眠そうだね」
「朝は苦手なんだよ…」
「ほら目を開けないと団長達が来るよ」
ライは小さな声でそう俺に言うが、眠すぎて目が開かない。
「そう言えば団長達が前に立って朝礼をするんだっけ?」
「そうだよ。受付で言われなかった?」
ライにそう言われ受付での事を思い出そうとするが、帰りの事に頭がいって良く聞いていなかった気がする。
「まぁ、団に入ってから人や顔を覚えても問題ねーよ」
それにここでは後ろの方過ぎて、一人見えるか見えないかぐらいだし。
「あ、団長達来たよ!」
その言葉で入口の方に目を向けると、いかにも強そうな雰囲気を纏った団長達の姿が見えた。
「敬礼!!!!」
―――ビシッ!!!
その合図で皆一斉に敬礼をし、そんな乱れず揃った動きに後ろで驚きつつも、それに合わせて同じように敬礼をする。
そして敬礼をする騎士達の前に立った中の一人には、あの時合格発表をしていた第一騎士団の団長がおり、偶然にも人と人との隙間からその団長だけが見えた。
「敬礼やめ!!」
その言葉で一斉に敬礼を止める。
「今日から新人騎士が10名と新たに加わり、先輩となる者が中にはいる事だろうがそこで気を緩めず一層気を引き締めて作業に当たるようお願いする。新人には早速だが今日から団に入ってもらい同じような仕事をしてもらうので、先輩の姿から多くを学ぶように。最後にお妃様の正妃任命の儀も間近に迫ってきているので宮殿周囲の警備を徹底し、その他に城下町で怪しい動きがないか見回りいつも以上に行うようお願いする。以上だ」
―――パチパチパチ!!!!
第一騎士団の団長がそのように挨拶をすると一斉に拍手が上がった。
確かどの騎士団に入れるかは実力とその者の資質によるらしく、それにより上から第一騎士団、次に第二騎士団……と振り分けられ、新人であれば第8騎士団に入団出来ればいい方だと聞いた。
実力が認められれば団の移動もされ、その騎士団によって行う仕事も変わるそうだけど……俺は一体どの騎士団に配属されるのだろうか。