暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「君はあの方の弟だから特別に言うが、側近部にはいない」
「いない……!?じゃあ、どこに!!」
「それは私(わたくし)の口からは言えない。だが、いずれ会える」
「何だよそれ……」
何で言えねーんだよ。側近部にはいないまで言っておいて。
こいつの口から言えねーって事は絶対に何かある。
陰でこき使われているに違いない!!!
「お前ら絶対に許さねー…」
拳をぎゅっと握りしめ、怒りに震えていると、そこに現れたのは部署の違う一人の騎士だった。
「お前がセレファーナか」
「そうだけど、何ですか?」
初対面のはずなのになぜか名前を知っているそいつ。
「陛下がお呼びだ。ついて来い」
「………っな!!」
陛下。こいつは今そう言った。
意味の分からない呼び出しに俺だけでなく、ウェンターズさんやライまでもが驚いていた。
「お前……何したんだよ」
「何もしてねーし」
ライはまるで俺が何か仕出かしたかのような目で見るが、正直思い当たらねー。
まぁ、一つあるとしたら城下町で貴族かなんか知らねーけど、返り討ちにしたぐらいか。
………え、まさかそれか?
いやいや……そんなわけ。
でもそれ以外あるか??
「陛下は気が短い。早く来い」
「………」
ウェンターズさんの案内で歩いている間噂で聞いたが、この国の王……陛下には様々噂があり、それはあまり良いものではない。
これまで実績で上げてきた事を知れば恐れられる理由も分かるけど、血に染まった王と呼ばれている方に目を着けられたとあれば、もう終わりかもしれない。
「大丈夫だ。セレファーナの思っているような事は起こらない」
「……なんで分かるんだよ」
近くにいた団長は分かった様子で俺に話しかける。
「いいから行ってこい。終わったら合流だ」
「………はい」
意味が分からねーけど、取り合えず行くしか選択はないみたいで俺は大人しくその騎士について行くと煌びやかな宮殿内へと入り、そして長い廊下を行くと目的の場所へと着いたみたいで、その騎士はあるドアの前で立ち止まった。