暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「…………って事はつまりあれか。今宮殿にいる理由が陛下ってわけか」
「うん」
戸惑った様子で頭を掻きむしるグラントに、私は迷いのない返事を返す。
思い返せば私が宮殿へ働くと出ていく時、一番駄々をこねたのがグラントだった。
まだ幼いのにそれでも私を守りたいと剣術を学び、どこに行くにも私の後をついてきた。
今回もそうだ。
恐らく私を心配して、この宮殿まで追いかけてくれたのではないだろうか。
「……グラント」
私はグラントの目をしっかりと見つめる。
「前とは違い宮殿内は危ない場所となったかもしれない。けれど、大丈夫よ。ここには皆がいる。陛下やクレハ、私に付いてくれているメイド達に……グラントが。それだけで十分心強いわ」
だから心配しないで。
私はここで幸せにしてるから。