暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】

「ここに来るまでの間さぞお疲れになられた事でしょう。この度は正妃任命の儀にお越し頂きありがとうございます。もう時期始まりすので後ほどお会い致しましょう」

喜びを心の中で噛み締めながらも私は二人に一度お別れして、その時を待つ。

この儀式が終われば、私はこの国の正妃……いわゆる皇后という立場になる。

皇后になりたくて陛下の妃になったわけでは無いけれど、皇后となる事でより陛下のお側にいられるのなら……私はそれを望む……。

それがどんなに怖い欲だと他の者に言われても、例え陛下が王でなく貧しい民だったとしても。

私は陛下の側にいる事を望む。

「お妃様。お迎えに参りました」

ノックの後にクレハの声が聞こえてきた。

「今、行くわ」


私は座っていた椅子から立ちあがると部屋から出る。

ドアの前にはクレハが立っており、私を陛下のもとまでエスコートしてくれた。

「ありがとう、クレハ」

クレハにお礼を言うと、差し出された陛下の手の上に自身の手を重ねるとゆっくりと前へ歩き出す。

真っ直ぐに引かれた赤色のマットの上を二人で渡る。

軽快な楽器の音と、二人を祝福する皆の拍手。

今日の陛下は黒色のマントではなく、王様らしい赤色のマントを身に着けている。

到着の場所には王座と正妃専用の豪華な椅子が横並びに用意されており、私と陛下はそこへ着くと皆に向きをかえた。

すると先程まで騒がしかったその空間は一気に静かになり、そこにいる皆が陛下に集中する。