暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】


ただお手洗いに行くようには見えないその女の人。


2人とも席離れるなんて普通は考えられないし、あの表情からして何か問題があったのか……………。


「………クレハ。お食事中に申し訳ないのだけど……少々お手洗いに行っても良いかしら?」 


「私も一緒について行きましょうか?」


「いいえ、1人で行けるから来なくて大丈夫」


「そうですか。では、私はここでお待ちしております」


クレハにお手洗いに行く事を伝え、その女の人を追うようにして席を立った。



白が貴重のお手洗い場は男性用と女性用で部屋が分かれており、ピンク色をした女の人の柄が描かれた部屋へその女の人は向かった。


中には真ん中の通路を挟むようにふた手に分かれた個室があり、綺麗なお手洗い場の鏡が私を映し出す。


「……………おかしい。さっきの女の人が見当たらないなんて」

追いかけて入ってきたのだがどのトイレの個室も鍵はかかっておらず、ノックをしてみるが全て反応はない。


つまり、ここには私以外誰もいないと言う事だ。


「さっきの人は一体どこへ行ったの………」


ふと前を向くと奥の方に窓ガラスが1つあるのが見えたが、やっと人ひとり大勢を変えて入れるぐらいの大きさだった為、ここから外へ出たとは考え難い。


それに………………、


「これ……は」


恐らくさっきの人が落としてしまったのか窓ガラス付近に花柄のハンカチが落ちており、それを拾おうと足を動かしたが一瞬何かを考えるかのように私はその足を止めた。


「………勝手に人が消えるはずない。それになぜあそこにハンカチが落ちているのも不思議だ」


もしあそこに何か仕掛けがあったとしたら……………このまま普通に近付いたとして私もあの人達のように消えてしまう恐れがある。



仕掛けがあるようには到底見えないがもし仮にそうであったら…………。


私は化粧直し用にポーチをお手洗いに持ってきてたので口紅を取り出すと個室内のドアに貼られている広告の紙裏にある文字を書く。


紙裏なので取り外さない限りお店の人には見つかりにくいと思ったからだ。


それとドアの下の方にシミ程度に口紅で汚れをつける。


真っ白のドアなので気になる人は気になるだろう。


これでクレハが見てくれたらいいが…………………というか、何もなければこれを消せばいい話なのだから。


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