暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
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金色の刺繍で装飾された黒い椅子等が赤色の絨毯の上に綺麗に並べられたその部屋には、ピリピリした空気の中会議が進められていた。
そんなピリピリした空気を醸し出させた張本人は言わずとも分かると思うがこの国の皇帝であるリードであった。
「では、次の議題に入る」
陛下の近くに座るファン宰相はまとめられた資料を見つつその場を進める。
「〜〜………であるわけで、これからどうしていくのか議論を…………」
ファン宰相が最後の言葉を話し終わる前に、会議室の扉が勢い良く音を立てて開いた。
_____バタンッ!!!!
「へ、陛下!!!」
入ってきたのは鉄の鎧をつけた見張りの兵士で、この者が発したある言葉によってその場が動揺に包まれた。
「……た、大変です!!!!お妃様が何者かに攫われました!!」
___ザワ……ッ………!
官僚達は各自隣同士でコソコソ話をし、対する陛下も大きく目を見開いていた。
「………………もう一度言ってみよ」
陛下はその場から立ち上がると床へ跪く兵士の元まで行き腰につけていた鋭い剣をその者の首へと突き付けた。
「場合によっては貴様の首は飛ぶ」
ザワメキは止んだがその代わり息の詰まるような緊張感がその場に走る。
この場に居る誰もがこの兵士はもう助からないと感じた次の瞬間。
「陛下、お待ち下さい」
跪く兵士の後ろからゆっくりと現れたのは、兵士とはまた違う衣装に見を包んだ男で、
黒いマントには月の形に刺繍された銀色の紋章があり、白色のズボンと紐のついた黒の革靴。
腰には鞘に収まった不穏なオーラの漂う剣がぶら下がっていた。
「…………なぜお前がここへいる。第一騎士団団長シュライク・ギャビン」
落ち着いた雰囲気でこの場に足を踏み入れたのはこの国の騎士団の中でも上に立つ騎士団で、更に上に立つ第一騎士団団長だった。
「その者の無礼はこの私がお詫び申し上げます」
「余の問いに答えぬか、シュライク」
「これは失礼致しました。先日出陣致しました戦は我らが勝利を収め、只今帰還致したところでございます」
そう言うと深々と頭を下げた。
「……………そうであったか。それはご苦労」
いくつかの騎士団を戦場へ派遣して長期間行われていた戦だったが、無事に勝利を収めたと聞き陛下はフッ…と笑みをこぼす。
「事情はこの者が知っていそうだな」
気分の変わった陛下は兵士の首元に突き付けていた剣をスッと鞘へ戻すと、会議の為集まっていた官僚達を解散させ、更に会議室周辺は人払いをした上で、
ファン宰相と陛下、そして騎士隊長だけの空間にした。