暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】



「報告書は後でファンへ提出するように。それと、先程あの兵士が発していた戯言について知っている事を述べよ」



「はっ。報告書は直ちに提出致します。そしてあの者が発していたお妃様の件なのですが私も帰ってきて先程知りました」


「つまり本当だと言うのだな?」


「恐らくそうでしょう。第二騎士団団長のエラストマーが文章をこちらへ寄こしています。内容は以下の通りでございます」


騎士隊長はそう言うと紙に書いていた文章を読み始めた。


「〜〜〜〜……………と言う事でございます」


「……………また余計な事に首を突っ込んだのか……」


その話を聞いて陛下は頭を抱える。


「しかし護衛の為あの者を側につけていたと言うのに攫われてしまうのはその者の失態だ。直ちに処罰せよ」


淡々とした口調でそう述べる陛下だが明らかに妃の件で少なからず動揺していた。


「お待ち下さい、陛下。お気持ちは分かりますがあの者は宮殿にとって優れた人材です。もう少し慎重になられて下さい」


そんな陛下に口を出すのは横へ立っていたファン宰相。



「悪いがもう少し情報を教えてくれないか?」  


ファン宰相がそう言うと再び騎士隊長は話し始めた。


「結論から述べさせて頂きますと、エラストマーが人身売買の証拠を抑え、消えたと噂された女達も無事に保護したそうでございます」


「となると先ずはその町の官僚に処罰が必要だな」


「後はその女達の中にお妃様を見た方がいらっしゃり、その者の話ですと数名のグループに売買されたと言うことでございます。服装的に恐らく旅人だと思った方が宜しいかと」


「…………余の妃を売買するなど恐れ知らずな者どもだ。直ぐさま捕らえ死よりも過酷な処罰を与えてやる」


その事実に陛下は不穏なオーラをその場に放つ。


「…………それとなのですが、その者が赤い髪をした人物を見たそうで今その手がかりを元に捜索を行っております」


「…………赤い髪…か。どこかで聞いたことがあるな」


ファン宰相はその言葉に顎へ手を当てて考えるが、一向に思い出す気配はなかった。


「旅人ならば話は早い。直ちに門を閉鎖しその周辺の身分調査の強化を行え!そして、入国と出国の記録簿から怪しい者の調査を直ちに行え!!」


「……御意」


陛下のその命令に騎士隊長はスッと跪くと直ぐに行動に移すべく会議室を後にした。


「お妃様が攫われるとは思いもよらなかったな。取りあえず私も問題解決の対応に応じる為、失礼する」



ファン宰相もその後を追うようにしてその場を後にした。



1人になった陛下は冷めきった表情で強く拳を握り小さな声でこう呟いた。



「一人たりとも逃がすわけにはいかぬ………」





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