暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】



「アルヴァン王子様は只今外出中でございます」


『王子様』と言うことは…………やはりこの国の王子様で間違いないみたい。

しかしその王子様がなぜ身をあの様に隠しアンディード帝国に居たのかが気になる。

視察?それともただの観光??


もし陛下の身に何か起こるような重大な事をあの場で企んでいたとしたら、ますます私はここで真相を探さねばならない。

私がその場でこの先の事を深く考えていると、思い出したかのようにその女の人は再び話し始めた。


「申し遅れましたが私(わたくし)は貴女を指導するようにとアルヴァン王子様から命じられました宮殿の侍女、ジル・ギャビンと申します」

その女の人はそう言うと私に向かって軽く礼をした。

「指導するように…………ですか?」

「さようです。貴女は今日からここで働く新人の侍女とアルヴァン王子様から聞いております」


…………………え!!??

新人の侍女!!?

「詳しい事は存じませんが、取りあえずこちらにお着替え下さい」

頭の整理も済まないまま渡されたのはジルさんが着ているのと良く似ている服だった。

首元がV字になった少しラフに見えるピンク色の服と下が少しフワッと広がって足首の方でキュっと締った白色のスボン。

それとパンプスにも見える靴。

最後に腰辺りへ軽くピンク色のタオルのようなものを巻けば…………完成だ。

「これで……宜しいのですか?」

「えぇ。良く着れています」

ドレスよりも遥かに軽い為色々と動きやすそうだ。

「貴女の名前をお聞きしても良いでしょうか?」

詳しい事は知らないってさっき言ってたよね。

それなら出来るだけこちらからの情報は出さないようにしないと。

「私は…………アニ・テリジェフと申します」

再びこの名を出すことになろうとは…………。

テリジェフとはお母さんがお父さんの所へ嫁ぐ前の苗字で、陛下から宮殿へ客人として連れて来られた時にメイドのアニーナだとバレないよう偽った名である。

< 69 / 368 >

この作品をシェア

pagetop