暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】


「では、テリジェフさん。早速仕事をしてもらいたいのだが身体の方はもう良さそうですか?」


「はい……っ!!」 

「それだけ声が出れば大丈夫そうですね。………さぁ、先ずは中を案内しましょう」


ジルさんは……………あ、ギャビンさんの方がいいのか?

ギャビンさんはニコッと私へ笑いかけると、私を連れて部屋の外へ出た。



「あら、ギャビン!」

まず案内してくれたのは沢山の本が綺麗に並ぶ書庫と呼ばれる場所で、偶然そこで違う侍女と遭遇をした。


「お疲れ様です。チベットさん」

ギャビンさんはそう言うと軽く一礼をした。

恐らく侍女の中でも位が上なのだろう。

「あれ、その子は?」

ギャビンさんの後ろに立っていた私へチラッと目を向けると、当然の反応が返ってきた。

「この子は今日から新しく働くことになった子です」

ギャビンさんから紹介され急いで頭を下げる。


「今日から働くことになりましたアニ・テリジェと申します!これから宜しくお願い致します」

「へぇ、テリジェフっていうの。私はリヤナ・チベットよ!今は王子様の命でリゼ様の次女をしているわ」

チベット……さん。

リゼ様とは一体………??

「リゼ様とは王子様のお妃様でございます。今はハレムにてお過ごしなのですが……チベットさんはなぜお一人でここへ?」

なるほど。お妃様の次女だったから位が上のように見えたのね。……………いや見えたのではなく実際にそうなんだ。


「リゼ様の頼まれ事で書庫へ来たの。まだ正妃の座が空いているでしょう?それでこの宮殿で過ごす他の妃たちが必死になって己を磨いていると同じように、リゼ様もこうして知能を磨いていらっしゃるの」

正妃争い………………どこへ行こうと必ず争いごとは起こるのね。

私の場合は他にお妃様はいないから妃同士の争い事はないけれど、もし陛下が新たにお妃様を娶ったらどうなるんだろう?

そのお妃様に嫉妬するのかな。

……それとも私だけ見てくれない事へ対し悲しみを感じるのかしら?

どちらにせよ想像つかない。

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