暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「そうか、それは苦労したんやな」
そう言って私を見つめる目は疑うような鋭い目つきではなく、優しいものへと変わっていた。
「あんたのその教養もその奴隷先で身についたものなんやな」
私の向かい側であるソファーへ腰を下ろすと、王子様はそう言って私へ問いかけた。
どうやら私のウソ話を信じて下さったようだ。
「……はい。キツいこともございましたが、そのお陰様で今役に立っているものもございますので、後の事を考えると良かったのかもしれません」
「あんたの前主とやらは大変惜しいことをしたものだな。このように教養の身についた者を逃してしまったのやから」
確かに教養の身についた奴隷は大変珍しい。貧しい者は学校に通うのも一苦労だと聞く。
そう考えると今回どう周りと接して行くのかもふまえ、考えて動かないと身に危険が及ぶ可能性がありそう。
王子様のように鋭い方も中にはいると思うので、とにかくボロを出さないように気をつけなきゃね。
………あ、そうだ。どうせこの中で私を奴隷として買った事実を知っているのはこの王子様とその従者達なのだから、今誰も他にいないここで、聞いてくれるかは分からないけど、試しにお願いしてみようかな。