暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】



対する王子様はそんな刺々しく聞こえる言葉に首を傾げ、何を言っているのか分からないとでも言うような表情をした。

「確かに同じ奴隷同士分かち合える事もあるやろうに、それは悪い事をしたわ。やけど、あんたの言う意味が分からへん。女を他国へ贈ることは親交を深めるいわばコミュニケーションのようなものや」


私のあのような態度が不思議でたまらないみたい。それよりも侍女からあのような態度をとられても怒らずにいるところを見ると、心が広く短気な性格ではないようね。陛下であればきっとそんな態度を取った使用人を許しはしないかも……。


そもそも私が客人であった時も凄い威圧感で、今は全然そんな事ないけれど、私が何か反対の事を言おうとすると、それはそれは凄い負のオーラだった。

つまり客人相手であってもそうなのだ。あれ………?でもなんかこの王子様、陛下に似てるかも。

顔とか性格とかは似ていないけど、何ていうか………あれよ、あれ。

たまに漂ってくる雰囲気が前の陛下と似ている。

帰省先で陛下に助けて頂いた時、平気で人を斬り捨てる姿に『なぜ殺したのだろう』と何とも言えないような気持ちになったのを覚えてる。

宮殿以外で初めて出会った時のあの陛下は噂通り視線が冷たくて発する言葉さえも冷えきっていた。

それこそ巷で言われていた、血に染まった王という言葉がよく似合い、宮殿もピリピリしていたかしら。

今はだいぶ落ち着いたけれど、そんな漂う孤独感や人をどうとも思っていないところが以前の陛下と重なって見えたのかもしれない。


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