暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
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暑いという事も忘れそうなぐらい綺麗なお花の並木道に、私は廊下からうっとりと外を眺める。
ハレムと呼ばれる後宮には沢山の側妻達が暮らしている事もあって中はとても広く、一人だと普通に迷子になってしまいそうだ。
今私が連れて来られているのはそんなハレムの端側……………日の差し込まない暗い廊下を行った先にある部屋で、外のお花達は対象的に日を浴びてキラキラと輝いている。
「"スフィア"様。新しい侍女をお連れ致しました」
「…………………ありがとう」
私をここまで連れてきてくれた侍女が発した言葉に対して返ってきたのは、溶け消えてしまいそうな、か細くて小さな可愛らしい声だった。
「では私はここで失礼致します」
「ありがとうございました」
案内係の侍女は自分の仕事が終わると、そそくさに立ち去ってしまった。