暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
とりあえず中へ入らないと側妻様のお世話が出来ないので、外から中へ呼びかけてみる。
「あの……私、新しく側妻様のお世話係となりましたアニ・テリジェフと申します。失礼ですが中へ入っても宜しいでしょうか?」
「………………」
しかし、居るはずの中から返事は返ってこない。
先程はあの侍女に返事を返していたというのに……………私の時はスルー!?
「あの〜………」
めげずに再び声をかけてみる。
すると中からゴソゴソ……と物音が聞こえた。
____ガラッ。
引戸が開いた。
「あ、私先程も紹介致しましたがアニ・テリジェフと申しま…………」
中から現れたのは腰まである桃色の髪がクルッとウェーブされた小柄で背の低く、いかにも女の子といったような側妻様で、見た目的にだいぶ若くお見受けられる。
恐らく弟のグランドぐらいかな。
だが、こんな歳から結婚するなどそう珍しくはないみたい。
「わ………、私は第8妻のユリノーゼ・スフィア・ガルゴといいます……」
侍女を前にオドオドする姿は王子様の側妻という風には見えず、自信なさげに下を向き、何かに怯えているのか私の目を見ようとはしない。