暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「王子様からスフィア様のお身体が弱いとお聞き致しました。何故このような部屋にいらっしゃるのかは存じませんが、せめて明るい部屋に居られた方が私はお身体に良いと思いますが」
部屋が暗いと心まで暗くなってしまいそう。それに日の光を少し浴びるだけでも心も身体も元気になる。
「私が後で頼んでおきますね」
きっとメイド長のようにここでは侍女長がいるはず。それか王子様に頼めばきっとランプか電気かどちらでもよいが部屋を明るくする物を揃えて下さるに違いないわ。
私は早速申請の為部屋から出ようとしたとき、急に服の袖を掴まれ動きを止められてしまった。
「……………あの、どうかなさいましたか?」
もちろん袖を掴んだ人物はスフィア様になる。
何か言いたげな表情。
「仰りたい事がおありならぱ、気を使わずどうぞ仰って下さい」
この人は何かを言おうとするたびにオドオドする。
「………………頼まなくて大丈夫」
「暗くても大丈夫なのですか?」
「そうじゃないの……。私のような者が他の側妻様と同じようにしてしまっては………いけないの」
私のようなって…………。側妻様でも階級とかあるのかな?それでもこれは流石に暗すぎるし……。
しかしここの規定で仮にそうなっているのなら仕方ないが…………………あ、そうだ!
「では少しお外に出てみませんか?」
「外……………ですか?」
「はい。お外でしたらこの場よりも明るいですし、電気も使わず環境にも優しいです」
暖かい日の光や外の優しい風……………あ、ここは暑いんだっけ。
倒れられても困るなぁ。いやでも日を遮るベールを頭にかぶせ、こまめに水分補給させれば問題ないか。
「スフィア様は太陽の日を遮るベールはお持ちでしょうか?」
「……………えぇ。数回しか使った事ないけれど」
そう言うとスフィア様はタンスの中をゴソゴソと漁り、キラキラと輝く水色の美しいベールを取り出した。
「美しいベールですね!」
「これは、アルヴァン様が私の誕生日にプレゼントしてくださったものなの…」
そう言う顔はとても嬉しそうだった。
王子様の事が好きだということが伝わってくる。