たとえ、この恋が罪だとしても。



「お兄ちゃんはソファで待ってて。今、救急箱持ってくるから」


リビングに入りそう言うと、お兄ちゃんの気が変わらないうちに救急箱を探しに行く。


えっと…いつもお母さんは、台所の棚から出して来るよね…


記憶を思い出しながら、台所で救急箱を探す。


どこだろう…


手当たり次第、棚を開けていく。


あ…あった!


下の棚を開けると、救急箱を見つけた。


救急箱を手に取ると、お兄ちゃんが待つソファに戻る。


「お兄ちゃん、あったよ…」


お兄ちゃんはソファに座り、じっと血が出てる手を見ていた。


「あぁ」


声を掛けると顔を上げ、そう返事をした。


そして、救急箱を受け取ろうと手を出す。



「…私がやる」


一瞬迷ったが、そう言った。



「…そうか」

何も文句も言わずに、手を差し出したお兄ちゃん。


「あ…うん。ちょっと待って」


まさか、手を差し出すとは思ってもみなかった。


さっきからお兄ちゃんの行動は、予想と違い少し戸惑う。


自分で言っといてだけどー…




救急箱から消毒液と絆創膏を探し、ソファ近くにあるテーブルの上に置いた。




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