たとえ、この恋が罪だとしても。



ドキドキ…

さっきまで震えていたのに、今はお兄ちゃんにドキドキしている。


血が出ている部分に消毒液を塗ると、お兄ちゃんは少し顔をしかめた。

そして、消毒液を軽くティッシュで拭き塗り薬を塗ると、絆創膏を貼った。


その間、お互いに一言も喋らなかった。


お兄ちゃんがずっと手元を見ているから、緊張したのもあるけど…



「…できたよ」

救急箱に消毒液などをしまいながら言った。



「あぁ…ありがと」

¨ありがと¨
ただ、お礼を言われただけなのに嬉しくて、微笑んでしまう。




「なぁ…真優…光太郎の気持ち、本当に気付いてなかったのか?」


ドクン。


救急箱を片付けようと立ち上がると、お兄ちゃんがそう言った。



…なんで、お兄ちゃんがそのことをー…


ゆっくりと振り返り、ソファに座ったままのお兄ちゃんを見た。


「光太郎が何したかは想像つく。けど、お前も悪い。そんな格好で行くから」

「!」

そんな格好、格好って…

お兄ちゃんも光太郎も、何でそんなことばっか言うの!?


「何で、私が悪いの!?光太郎の気持ちだって、知らなかったんだから!!小さい頃からずっと一緒だったから、今さら光太郎をそんな風に見れないし!!それに…」

「もう、子供じゃないってことだよ。光太郎にとって、真優は」

ドクン。

感情的になって怒る私に対して、お兄ちゃんの声はとても冷静だ。



「家に帰ってきた真優の顔を見れば、光太郎に何されたかは想像ついた。俺も男だから…けど、光太郎のしたことは最低なことだ。男として。だけど、真優も悪い。もう自分が子供じゃないってことを、わかっていないから」

「…っ」

真剣な表情で話すお兄ちゃんの目から、視線を外せない。




「光太郎のことを許してやれとは言わない。けど、少しは光太郎の気持ちもわかってやって欲しい。…俺が言いたいのは、それだけ」


静かにソファから立ち上がった、お兄ちゃん。


「今日はもう、ゆっくり休め」

すれ違いざまに、ぽんっと頭を撫でられた。


お兄ちゃんはリビングから出て行こうとする。


待って…


「…っ」


勢いよく振り返りー…



「お兄ちゃん!」



大きな声で呼び止めた。








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