たとえ、この恋が罪だとしても。





静かに扉を閉めると、やっとお兄ちゃんの手が腕から離れた。



「…何ここ」


手が離れたことが合図だと思い、すぐに声が出てしまった。



6畳ほどの小さな部屋。
窓は一つしかないが、太陽の光が差し込み部屋の中が明るい。

壁には本棚がずらっと並んでいて、どれも古い本ばかりに見える。

そして、部屋の真ん中には2人で座れるぐらいの机と椅子。

古そうな机だが、この部屋にはピッタリだ。





「昔の教官室。で、今は資料置き場になってる」


部屋の中を見渡していると、お兄ちゃんがそう言った。


「へー…でも、よく鍵を借りられたね。こういう場所の鍵って、普通は職員室で管理してるもんでしょ?」


授業で使う教室などの鍵は職員室に行き、担当の先生の許可がないと借りられない。



「この部屋の鍵は、生徒会が管理してるんだよ。で、さっきのが生徒会長」

「生徒会長!?」

「ばか。声でかい」


お兄ちゃんに睨まれ、口を押えた。


入学式の時、お兄ちゃんのことばかりに気を取られてたから、生徒会長の顔なんか記憶にない。


「一人で集中して勉強したい時に、借りてるんだよ。今の生徒会長とは、中学からずっと一緒だし」


「…へー」


中学から一緒ってことは、私も知ってる人かな?
帰る時に、もう一度見てみよう。




「そんなことより、勉強するんだろ?ボケッとしてないで、座れよ」


「あ…うん」

お兄ちゃんが机に鞄を置き、椅子に座った。

同じように机に鞄を置くと、お兄ちゃんの隣に座った。







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