たとえ、この恋が罪だとしても。




「お待たせ…」

部屋から出ると、目の前にいたのはお兄ちゃんではなかった。



驚いて、静止してしまう。



「真優ちゃんだっけ?僕、生徒会長やってる田島って言うんだけど…覚えてる?」


部屋の外にいたのは、来るときにお兄ちゃんに鍵を渡していた人。

身長はお兄ちゃんの頭一つ分小さくて、眼鏡をかけた穏やかそうな男の人。



「…えっと…」


覚えてるって…生徒会長のことだって知らなかったのに、そんなこと言われても…


何て言っていいかわからず悩んでいると、田島さんはニッコリと笑った。



「涼真なら今、彼女に呼ばれて出て行ったよ。すぐ戻って来るだろうけど」


話題を変えてくれてホッとするが、¨彼女¨というワードに引っかかった。




「あんな女癖悪い奴が何でモテるのか、小さい頃から一緒だけど今だにわからないんだよね」


田島さんは腕を組み、頭を傾げた。



「…彼女がコロコロ変わるのって、女癖が悪いからなんですか?」


疑問に思ったことを素直に聞いてみた。



「そりゃ…中学から何人の女の子と付き合ってきたと思う?もう、10人超えたよ、10人!俺なんか、まだ2人ぐらいなのにさ」


じゅ…10人!?
しかも、超えた!?


驚いて、言葉が出ない。


そんなに…



「今付き合ってる女の子だって、学年1の美女だっていうのに涼真なんかに惚れちゃってさ」



田島さんの話がだんだんと、耳に入ってこなくなる。



お兄ちゃんがモテるのは知ってる。


けど、まさか…そんなにたくさんの女の子たちと付き合っていたなんて…


だんだんと顔が俯き、今見ているのは床。




なんか、ズシンと心が重くなるー…






「言いたい放題だな、田島」



聞いたことのある声がし、俯いていた顔を上げると、さっきまで楽しそうに話をしていた田島さんの顔が固まっていた。





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