たとえ、この恋が罪だとしても。



「お兄ちゃん…」


田島さんの背後に立ったお兄ちゃんは、上から見下ろすように睨んでいる。


「りょ…涼真…意外と早かったんだな、戻ってくるの」



恐る恐る振り返る、田島さん。



「ちょっと話しただけだよ。帰るぞ、真優」


「あ…うん」


遠のいていた意識をハッキリさせ、先に歩き出したお兄ちゃんの後を追う。


「妹ちゃん」

「!」


田島さんの横を通り過ぎる時、手首を掴まれた。



何-…?


掴まれた手首を見てから、田島さんを見た。



「またね」


掴んでいるとは逆の手で、満面の笑みで手を振られた。


「えっと…」


手を振るだけで、私の手首を掴む必要がある?


と、思いながらも、相手は先輩で生徒会長。
文句を言えるわけでもなく、とりあえず反対の手で、手を振ろうとした時ー…






「気安く触るな」


掴まれた手首を無理やり離すようにお兄ちゃんの手が、田島さんの手を振り払った。




「!」

「いて!」

田島さん悲鳴を上げ、手の甲をさすっている。



「田島、これ以上面白がって何かするなら本気でキレるぞ」


お兄ちゃんが私と田島さんの間に入り、そう言った。




「お~、怖い顔」


…怖い顔?


私からは、お兄ちゃんの背中しか見えない。
だから、どんな表情で今の言葉を言ったのかわからない。


けど、怖い顔って…さっき山崎先生も、そんなこと言っていたような…



「真優、行くぞ」

「!」


今度は、お兄ちゃんに手首を掴まれた。
そして、引っ張られるように図書室から出て行く。


「じゃあね!妹ちゃん」


さっきお兄ちゃんに怒られたというのに、田島さんは笑顔で手を振っている。


振り返す暇もなく、お兄ちゃんにグイグイと引っ張られる。




< 130 / 221 >

この作品をシェア

pagetop