たとえ、この恋が罪だとしても。
「お兄ちゃん…」
田島さんの背後に立ったお兄ちゃんは、上から見下ろすように睨んでいる。
「りょ…涼真…意外と早かったんだな、戻ってくるの」
恐る恐る振り返る、田島さん。
「ちょっと話しただけだよ。帰るぞ、真優」
「あ…うん」
遠のいていた意識をハッキリさせ、先に歩き出したお兄ちゃんの後を追う。
「妹ちゃん」
「!」
田島さんの横を通り過ぎる時、手首を掴まれた。
何-…?
掴まれた手首を見てから、田島さんを見た。
「またね」
掴んでいるとは逆の手で、満面の笑みで手を振られた。
「えっと…」
手を振るだけで、私の手首を掴む必要がある?
と、思いながらも、相手は先輩で生徒会長。
文句を言えるわけでもなく、とりあえず反対の手で、手を振ろうとした時ー…
「気安く触るな」
掴まれた手首を無理やり離すようにお兄ちゃんの手が、田島さんの手を振り払った。
「!」
「いて!」
田島さん悲鳴を上げ、手の甲をさすっている。
「田島、これ以上面白がって何かするなら本気でキレるぞ」
お兄ちゃんが私と田島さんの間に入り、そう言った。
「お~、怖い顔」
…怖い顔?
私からは、お兄ちゃんの背中しか見えない。
だから、どんな表情で今の言葉を言ったのかわからない。
けど、怖い顔って…さっき山崎先生も、そんなこと言っていたような…
「真優、行くぞ」
「!」
今度は、お兄ちゃんに手首を掴まれた。
そして、引っ張られるように図書室から出て行く。
「じゃあね!妹ちゃん」
さっきお兄ちゃんに怒られたというのに、田島さんは笑顔で手を振っている。
振り返す暇もなく、お兄ちゃんにグイグイと引っ張られる。