たとえ、この恋が罪だとしても。






正門から出ると、掴まれていた手首が離れた。


力強く掴まれていたため、少し赤くなっていた。


「痛い?」


一歩前にいるお兄ちゃんが、顔だけを後ろに向けそう聞いてきた。


「…痛いよ」

嘘。

赤くなっているわりには、あまり痛くない。


けど、何故か嘘をつきたくなってしまった。



「悪かった」

謝るとすぐに、お兄ちゃんは歩き出した。


「あ…ちょっと、待って」


今の本当にそう思ってる?ぐらいの謝り方だった。



小走りでお兄ちゃんの隣に並ぶと、こっそりとお兄ちゃんを見上げた。



¨怖い顔¨


今日1日で、二人の人に同じことを言われた。


私にはわからなかったけど、どんな顔してたんだろ?


今はいつも通り、無表情に近い顔で歩いてるけど…





「…前向いて歩かないと、こけるぞ」


「え?」

前を向いたまま言った、お兄ちゃん。


「頭打ったら、バカが余計にバカになるぞ」


「!?」


バカが余計にバカって…



お兄ちゃんの言葉に、頬が膨らむ。




< 132 / 221 >

この作品をシェア

pagetop