たとえ、この恋が罪だとしても。
正門から出ると、掴まれていた手首が離れた。
力強く掴まれていたため、少し赤くなっていた。
「痛い?」
一歩前にいるお兄ちゃんが、顔だけを後ろに向けそう聞いてきた。
「…痛いよ」
嘘。
赤くなっているわりには、あまり痛くない。
けど、何故か嘘をつきたくなってしまった。
「悪かった」
謝るとすぐに、お兄ちゃんは歩き出した。
「あ…ちょっと、待って」
今の本当にそう思ってる?ぐらいの謝り方だった。
小走りでお兄ちゃんの隣に並ぶと、こっそりとお兄ちゃんを見上げた。
¨怖い顔¨
今日1日で、二人の人に同じことを言われた。
私にはわからなかったけど、どんな顔してたんだろ?
今はいつも通り、無表情に近い顔で歩いてるけど…
「…前向いて歩かないと、こけるぞ」
「え?」
前を向いたまま言った、お兄ちゃん。
「頭打ったら、バカが余計にバカになるぞ」
「!?」
バカが余計にバカって…
お兄ちゃんの言葉に、頬が膨らむ。