たとえ、この恋が罪だとしても。
「彼女とは、大学のOBの飲み会で知り合ったんだ。彼女は当時、まだ20歳で大学に在学中だった」
「!」
山崎先生が横に並んで立ち、写真を手に取った。
「飲み会に共通の知り合いがいて、飲みながら話してるうちに意気投合して仲良くなった。5歳も年下だった彼女に夢中になったのは、俺だった。いつもいつも笑って話を聞いてくれる彼女に、教師になったばかりの俺にとっては、何よりも癒しだった」
写真を見ながら話す山崎先生の横顔は、寂しそうに見える。
「けど、付き合って2年後…大学卒業を控えた彼女が、突然いなくなってしまったんだ」
「!」
ドクン!
「…っ」
いなくなったって…
山崎先生の言葉に驚き、心臓がドキドキする。
「スマホに電話しても出ない、メールを送っても返事がない。当時、住んでいた彼女のアパートにも行ってみたけど、俺が行った時にはもう引き払った後だった。大学にも問い合わせてみたけど、個人情報のため教えてくれなかった」
当時のことを思い出しているのか、山崎先生の写真を持つ手に力が入っているのがわかる。
「彼女の実家にも行ったけど、何も教えてくれなかった。共通の知り合いに聞いても、知らないと言われ…他人の俺ができることの精一杯のことをしたが、彼女を見つけることはできなかった」
カタンー…と小さな音を立て、山崎先生は持っていた写真を本棚に戻した。
「その2年後だったー…彼女が亡くなったと聞いたのはー…」
山崎先生は話しながら後ろに振り返り、テーブルに向かって歩き出した。
「葬儀ももう済んでいて、俺が見たのは彼女が眠るお墓だった。何で亡くなったのか、どうして今まで誰も教えてくれなかったのか、いまだにわからないんだ」
テーブルに置いたコップを手に取り、山崎先生はお茶を一口飲んだ。
その横顔は、さっきよりもさらに寂しそうでー…
「…先生は今でも、彼女のことが好きなんですか?」
そう思えてならない。