たとえ、この恋が罪だとしても。
部屋のドアの前には、息が上がったお兄ちゃんが立っていた。
びっくりして山崎先生から離れようとするが、きつく抱き締められ離れることができない。
「山崎先生っ…」
目の前にいる山崎先生を見上げ、離してくれるように訴えるが腕が緩む気配がない。
何を考えているのー…?
ていうか、どうしてお兄ちゃんがここにいるの?
もう、頭の中はパニックになってしまっている。
さっき、我慢してって山崎先生言ったよね?
このことなの?
けど、お兄ちゃんの前で山崎先生に抱き締められてるのを見せて…何になるの?
山崎先生の考えていることがわからない。
「…意外と早かったな。さすが、陸上部のエース」
頭上から山崎先生のそんな声がした。
「電話で住所行っただけで、よくここまで辿り着けたよな」
電話?住所?
いつ、お兄ちゃんに電話したの?
「…そんなことはどうでもいいですよ。とりあえず、真優から離れてもらえませんか?山崎先生」
お兄ちゃんのとても低い声…兄妹だからわかる、この声のトーンはお兄ちゃんが一番怒っている時だ。
「教師が生徒に手を出して、問題になるのは嫌でしょう?」
ビク!
お兄ちゃんの言葉に、身体がビクっとした。
確かに、今この状況が学校にバレたら困るのは山崎先生だ。
「あの…山崎先生…お兄ちゃんの言う通りですから…」
¨離して¨と言おうと山崎先生を見上げたが、山崎先生は小さく首を振った。
…どうして…
山崎先生が何を考えているのか、全くわからない。