たとえ、この恋が罪だとしても。



しかし、山崎先生と目が合うことはない。


「…そうだ、俺が見たかったのはその顔だ」


にやりと笑い、山崎先生はお兄ちゃんの顔を見ている。


「お前のその男の顔が見たかったんだ」


…男の顔?



どういう意味?

山崎先生の言った意味が理解できない。


「ふざけんな…」

「!?」

「俺たちの気持ちなんかわからないくせに、勝手なことばっか言ってんじゃねぇよ!!!」

そう怒鳴り声を上げたお兄ちゃんは、右腕を振り上げ…


バシン!!!


「!?きゃっ」


山崎先生を殴った。


その衝撃で、山崎先生の身体からやっと離れた。


一方の山崎先生は殴られた衝撃で、床に倒されてしまった。


「先生っ…」

駆け寄ろうとしたが、山崎先生は手の平を見せ止めた。


…どうして?

「…いてて…光太郎にも、こうやって殴ったのか?」

そう言いながら、山崎先生は殴られた頬を抑えながら立ち上がった。


光太郎ー…?
どうして今、光太郎の名前が?

「ただ妹を思って殴ったのだとしたら、光太郎は納得いくだろうけど…本当の意味を知ったら、可哀想だな」


本当の意味?

どういうこと?

お兄ちゃんは、妹の私のことを思って光太郎に怒ったんじゃなくて…他に意味がー…




コンコンー…


「!」


ビク!

玄関の方から、ドアをノックする音が聞こえた。

「やば…隣か下の階から苦情か?」


山崎先生はそう言いながら、口から出ている血を指で拭きながら玄関へと向かった。




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