たとえ、この恋が罪だとしても。
「あぁ、実はー…」
急に真剣な表情になった、田島さん。
ドキドキ。
さっきとは違う表情に、心臓がドキドキ言い始めた。
ドキドキ。
何ー?
田島さんを見つめる私の表情にも力が入り、眉間にシワが寄ってしまう。
ドキドキ。
「涼真にさ、生徒会の出店を手伝ってもらう予定だったんだけど、謹慎中でアイツ学校にいないじゃん?だから、代わりに真優ちゃんに手伝ってもらおうと思って」
¨ははは¨と笑いながら、あっけらかんと言った田島さん。
「…へ?」
さっきの真剣な表情は何だったのかと思うぐらいの話に、身体の気が抜けた。
「本当は涼真を売り子にして、一儲けしようと思ったんだけど無理じゃん?だから、真優ちゃんに頑張ってもらおうと思って」
お兄ちゃんを使って一儲けって…
確かに、お兄ちゃんが店先に立っていれば女の子達は寄ってくるだろうけど…
生徒会長だとは思えない発言に、ぽかーんとしてしまう。
「だから、はい。これ」
「!」
田島さんから手渡されたのは、一つの鍵。
「あの…私に売り子なんて…」
渡された鍵を見て、戸惑う。
「真優ちゃんにそんなことさせたら、俺が涼真に怒られるよ。大丈夫、真優ちゃんには裏方をやってもらうから」
「裏方…」
売り子じゃなくて、少しほっとする。
でも、私が売り子をやったとしてお兄ちゃんは怒るのかな?
どちらかというと、バカにするような気がするけどー…
「じゃあ、よろしくね。19時に図書室で。詳しいことは、その時に話すから」
そう言うと、田島さんは教室から出て行こうとする。
「あ…待って…」
まだ、やるとは言ってないんだけどー…
と思ったが、呼び止めたのにも関わらず、田島さんは出て行ってしまった。
「…どうしよう」
一人残された教室で、出てしまった一人言。
お兄ちゃんの代わりに生徒会の仕事を手伝うなんて、私にできるだろうか?
手に持つ鍵を見つめる。
19時に図書室かー…
「…まぁ、なんとかなるか」
お兄ちゃんを謹慎処分にしてしまったのは、私にも原因がある。
だから、お兄ちゃんのためにも頑張らなきゃ。