たとえ、この恋が罪だとしても。
「お兄ちゃん…」
図書室の窓際に立っていたのは、謹慎処分中で学校にいるはずがないお兄ちゃんだった。
「どうしてここに…そうか…田島か…」
お兄ちゃんも驚いた表情をしていたが、誰の仕業かわかったのかいつも通りの表情に戻った。
ドクン、ドクン。
謹慎処分中のお兄ちゃんは家にいることはいたが、私が家にいる時は部屋から出て来なかった。
だから家族の私でも、お兄ちゃんの顔を見るのは一ヶ月ぶりでドキドキしている。
「…こっち来いよ」
ドキ。
「…え?」
今、何てー…
薄暗い図書室の中、お兄ちゃんはこっちに向けていた顔を窓に向けた。
「花火…一緒に見よう」
背を向けたまま、そう言ったお兄ちゃん。
ドクン、ドクン。
今、花火一緒に見ようって…
「…っ」
ドクン、ドクン。
思ってもみなかったお兄ちゃんの発言に、嬉しくて胸が苦しくなる。
「うん…」
小さな声で返事をすると、ゆっくりと薄暗い図書室の中を歩く。
ドクン、ドクン。
さっきベンチで思っていたことが、まさか現実になるなんてー…
高まる胸を抑えながら、窓際に立つお兄ちゃんの隣に並び窓の外を見た。