たとえ、この恋が罪だとしても。



家の駐車場に車を停めると、車から降りた。

山崎先生、お兄ちゃん、私ー…

3人で家の門の前で、立ち止まる。


ドキドキ。

真実を知りたいと決意したはずー…
なのに、いざとなると足が重くなる。

山崎先生を連れて行ったら、お母さんはどんな顔をするだろうか?


そして、真実を教えてくれるだろうか?


誰も前に進まず、立ち止まったままでいるとー…



「俺が先に行くわ」

「!」

お兄ちゃんはそう言うと、門の扉を開け中に入って行く。

「え…え…」

どうしよう?と、お兄ちゃんの背中と隣にいる山崎先生を交互に見る。

「さすが、兄ちゃん。カッコ良いな」

山崎先生は何故か、お兄ちゃんに感心している。


…こんな時に何言ってんの?

呆れ顔で山崎先生を見つめていると、ぽんっと頭を撫でられた。

「!」

「真実を知るのは、俺も怖い。だけど、知らなければ前には進めないんだ。わかるか?」

前を向いたまま、山崎先生が私の頭を撫でながら言った。


¨俺も怖い¨

山崎先生が言った言葉が、心にズシンと重みが乗った。

真実を知ることはきっと、私たちよりも山崎先生の方が辛いと思う。

愛している人が突然いなくなって2年後…
亡くなっていると聞かされた時、山崎先生はどんな気持ちだったんだろうか?

突然いなくなってしまった理由もわからず、数十年後ー…
愛している人にそっくりな私が入学してきた。

その時にどんな気持ちだったんだろうか?



「…わかります」


そのことを全てを知るために、ここに来た。


だから、もう躊躇してちゃダメなんだ。


前に進むためには、真実を知らなければいけない。



< 209 / 221 >

この作品をシェア

pagetop