たとえ、この恋が罪だとしても。


涙が溢れ出て、アルバムに流れ落ちる。


「真実が真優を授かった時に、癌が見つかったのよ。けど、あの子は治療する気なんて全くなかった」

お母さんが俯き加減に、喋り出した。

「治療をするなら、お腹の子を諦めなきゃいけないって主治医に言われたからって。そんなの絶対嫌だって言って、私が説得するのも聞いてくれなかったわ」

「…どうして、俺には何も言ってくれなかったんだ?お腹の子供の父親は俺だろう?」

「真実に口止めされたからよ。きっと、山崎くんも産むことを反対する。だから、黙っててって」


「当たり前だろ!?真実の命がかかってんだ!!」

ビク!

声を荒げた山崎先生に、ビクっと身体が跳ねた。




「そうだからよ。男と女では、根本的に考え方が違う。自分のお腹に新しい命が宿ったのよ?それも、愛している男の子供を。その子供を殺せると思うの?」


声を荒げた山崎先生とは対照的に、お母さんの声はとても冷静で前を見据えている。


「お腹の中で生きているのよ。それを嫌ってほど、全身で感じるの。育っていくにつれて、自分の命より大切になっていくのよ」



「…それはわかった…けど、どうして俺に何も言ってくれなかったんだ…どうして、突然いなくなったりしたんだ…」


山崎先生は頭を抱え、俯いてしまった。
その肩は、震えている。



「山崎くんの負担になりたくなかったからよ。まだ若い山崎くんに、子供だけを残して死ねないって。彼には、彼の人生がまだ長く続いていく。だから、一人で産むことにしたのって」


「若いって、俺よりも年下のくせして…全部一人で決めて…俺は、何だったんだ…」


俯いたまま喋る山崎先生の声は、震えている。






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