たとえ、この恋が罪だとしても。
「そんなに嬉しいのか?」
ドキ!!
「え…」
前を歩いていたお兄ちゃんが、顔だけを後ろに向けて言った。
「さっきまで泣きそうな顔してたのに、今は笑ってる。俺と帰るのが、そんなに嬉しいのか?」
ドクン。
「…っ」
それはもちろん、好きな人と帰れるんだから嬉しくて当たり前。
けど、そんなことをお兄ちゃんに言えるわけがない。
「…久しぶりだから。てか、優華さん良かったの?せっかく待ってたのに」
言えないから、話題を変えるしかない。
足を止めたお兄ちゃんを追い抜き、そう聞いた。
「あぁ。アイツとはいつも帰ってるし」
お兄ちゃんも足音で、歩き出したのがわかる。
「そうなんだ。優華さん綺麗な人だね。お兄ちゃんにはもったいないぐらい」
…嘘。
本当は、優華さんが羨ましくてしょうがない。
「…あぁ。そうかもな」
ズキ。
自分で話を振っといて、傷つくなんてバカみたい。
隣に並んだお兄ちゃんとは、人ひとり分離れて歩く。
これが、兄妹の距離。
その後は、お互い何も喋らず家に帰った。