たとえ、この恋が罪だとしても。
「ただいま」
学校から帰ると、玄関にはお兄ちゃんの靴があった。
珍しい、私より早いなんて…
玄関で靴を脱ぎながらそう思っていると、ふと昼間に光太郎が言ったことを思い出した。
¨涼真先輩に勉強見てって頼んでおいて¨
念を押されたし…
「…」
鞄から数学のテストを取り出す。
お兄ちゃんのおかげでテストの結果も良かったから、お礼も言ったほうが良いよね。
高橋先生も言ってたし!
「…よし」
実の兄に話掛けるのに、理由がないといけないのかー…と自分で思ってしまった。
けど、今の私は何か用がないとお兄ちゃんに話掛けれない。
覚悟を決め、リビングの扉を開けた。
「お兄ちゃん…あれ?」
リビングには誰もいない。
いつもは家にいるお母さんも、今日はいない。
あれ…二人でどっか行ったのかな?
キョロキョロとしながらリビングのテーブルの前まで行くと、手紙が置いてあった。
[友達と出掛けてきます。帰りは夜になると思うから、夕飯は冷蔵庫の中に入ってます]
お母さんの字で、そう書いてあった。
そっか…お母さん出掛けているのかー…
じゃあ、お兄ちゃんは?
カタン。
「!」
二階から物音が聞こえた。
お兄ちゃん、自分の部屋にいるの?
鞄を持ち、二階へと上がる。
片手には、数学のテストも。
テストの結果を報告するのと、光太郎に頼まれたのを伝えるだけ。
階段を登りながら、何度も心の中で復唱する。