たとえ、この恋が罪だとしても。
「しかし、涼真がまさか真優を連れてここまで来てくれるとは思ってもなかった」
ドキ。
目の前に出されたステーキに夢中になっていると、何気ないお父さんの言葉に心臓がドキっとした。
「真優の中学の入学式も卒業式も、一緒に写真撮らなかっただろ?家族よりも、友達や彼女を優先する年齢になったんだと思っていたけど、今回は参加いてるってことはお前、彼女に振られたな?」
ドクン。
真向いにいるお父さんは、ニヤニヤと笑いながらお兄ちゃんに聞いている。
そんなこと考えもしなかった…
言われてみれば、そうだ…何で今回は、いるんだろう?
持っていたナイフとフォークをテーブルに置き、ジュースに手を伸ばす。
ドクン、ドクン。
お兄ちゃんは、何て答えるのだろうか?
自分を落ち着かせるために、ジュースを口に含んだ。
「もう、あなた!そんなこと聞かないでください!せっかく涼真が久しぶりに、家族と一緒に過ごしてくれてるんですから」
隣に座るお母さんが、お父さんの肩を叩く。
「涼真、答えなくていいから」
お母さんがお兄ちゃんにフォロー入れた時だった。
「父さんに言われた通り、振られたよ」
「!?」
お兄ちゃんがサラッと答えたから、飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。
…うそ…
驚きのあまり、隣に座るお兄ちゃんを凝視してしまう。
え…それは、中学の時に付き合っていた優華さん?
それとも、他の人ー…?
色んなことが脳内を駆け巡るが、言葉に出して直接お兄ちゃんには聞けない。
「そうか!振られたか!!お前もまだまだだな」
「あなた!!」
何故か嬉しそうなお父さんと、そんなお父さんの反応に怒るお母さん。
「…何だよ?」
ドキ。
凝視し過ぎていたため、お兄ちゃんに変な目で見られてしまった。
「べ…別に…」
慌てて目を逸らし、料理を口に含んだ。
むしゃむしゃと食べるが、味がよくわからない。