たとえ、この恋が罪だとしても。



「白石はもう部活決めたのか?」



山崎先生は話題を変え、窓の外を向いたまま聞いてきた。


「いや…まだ…です」

まだ何も決めていないため、声が小さくなる。


「やりたい部活はないのか?」

「特には…」

「だったら、美術部はどうだ?」

「美術部?」


新入生向けに行った、部活紹介で美術部なんてあったっけ?


数日前の記憶を辿るが、覚えがない。


「まぁ、こんな感じにほとんど幽霊部員ばっかだけどな」


山崎先生が振り返り、教室を見渡しながら言った。


「…え!?」


誰もいないのに何で美術室が開いているんだろう?とは、入る前に思ったけど…




「ちなみに、顧問は俺な」

「え!?」


化学の先生なのに!?


「やっぱ、そういう反応だよな」


苦笑いしながら、山崎先生が言った。


「だって…化学と美術って全く関係ない…」


真逆というか…畑違いというか…


「まぁ、理由は一番楽そうだったからなんだけど。ほら、こんな状態だし」


山崎先生は苦笑いで、教室を指さしながら言った。


確かに…こんなに誰もいないなら、指導することもなくて楽かも。


じゃあ今、山崎先生がここにいるのはー…




「サボってたんですか?」

じろっと横目で、隣にいる山崎先生を見上げた。


「いや…まさか…」


しどろもどろに目を逸らした、山崎先生。





「サボってたんですね」

「…すいません」


問い詰めると、あっさり認めた。


「あはは!」


何故かはわからないけど、山崎先生と話していると楽しい。


「白石、お前怖いな」


「あはは!」

「あはは、じゃねぇよ」


怖さをアピールするためなのか、身震いする山崎先生がもっとおかしかった。






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