たとえ、この恋が罪だとしても。
「ほんと…兄ちゃんとは、性格が全く似てないんだな」
ドキ。
また、お兄ちゃん…
笑っていた顔が、真顔にすぐ戻ったのが自分でもわかった。
「どうせ…私なんかー…」
お兄ちゃんと比べたら、何もできない妹ですよー。と、言おうと思ったのにー…
「俺は、妹の方が好みだけどな」
「…」
好み…?
「え?」
ちゃんと聞こえたはずなのに、もう一度聞き返す。
今、好みって…
隣にいる山崎先生を見上げる。
目が合うと、何故か驚いた顔をしている。
「あ…いや…妹の方が生徒として、可愛げがあるって意味だよ。変な意味ではない」
顔の目の前で、手をぶんぶんと振りながら早口でそう言った。
「じゃあ、俺もう行くわ。戸締りだけ頼む」
そして慌てた様子で、美術室から出て行った。
「…何なの…」
一人残され、シー…ンと静まり返る美術室。
「ビックリした…」
生徒相手に、好みとか言う?
変な意味ではないんだろうけど、好みだなんて言われたのなんて初めてだったから、驚いた。
しかも自分で言っといて、あの驚いた顔ー…
「あはは」
誰もいないのに、さっきの山崎先生の表情を思い出し笑ってしまった。
まだ入学して1週間ぐらいしか経ってないのに、あんな風にくだけて話せた先生は初めてだ。
山崎先生は面白いし、ここの美術室からならお兄ちゃんが見える。
窓の外に目を向けると、まだ陸上部は部活をやっていた。
数人で走っている中に、お兄ちゃんの姿もあった。
お兄ちゃんは誰よりも早くて、誰よりも綺麗ー…
「美術部に入部しようかな…」
…よし!そうしよう!!