たとえ、この恋が罪だとしても。
「白石!」
美術部に入部して、数日が経った。
帰りのSHRも終わり、美術室に向かおうと教室から出ようとしてると、山崎先生が声を掛けてきた。
「何ですか?」
「俺、今から職員会議だから先に美術室の鍵渡しとく」
そう言うと山崎先生はズボンのポケットから、美術室の鍵を出した。
「暗くなる前に帰れよ」
「はーい」
その鍵を受け取ると、山崎先生は職員室に向かって歩いて行った。
いつもは一応職員室まで行ってから、山崎先生から鍵を受け取っている。
いつも私が美術室の鍵を開けているけど、同じ部員の人をまだ一度も見たことがない。
まぁ、一人の方が気楽でいいけど。
「真優!」
教室の扉の前でそんなことを考えていると、背後からぽんっと肩を叩かれた。
「光太郎…あれ、部活行かないの?」
振り返ると、そこにいたのは光太郎。
「今から行くよ。てか、さっき山崎先生から何受け取ってた?」
何でそんなことが気になるんだろうか…
「は…?美術室の鍵だけど」
「何で?」
「何でって…美術部員だから」
「は!?真優が!?」
ビク!
大きな声で驚かれ、こっちまでビックリしてしまった。
「そんなに驚く…?てか、光太郎に言ってなかったっけ?」
「聞いてない」
そっか…
バスケ部に入部した光太郎は朝練があるからとか言って、結局一緒に登校できてないんだっけ?
放課後も、帰りのSHRが終わるとさっさと部活に行ってたから、話す暇もなかったんだっけ?
「真優に美術の才能あったっけ?てか、絵に興味あった?」
「ないけど…って、失礼な。興味はないけど、何か部活入らないといけないから」
「で、美術部?」
「そう」
「ふーん」
光太郎が、怪しいものを見る目で見てくる。
何で、そんな目で見てくるの!?