たとえ、この恋が罪だとしても。
「あれ…白石、まだ残ってたのか?」
時刻は、7時を廻っている。
誰もいない美術室で一人、光太郎を待っていると山崎先生が扉から顔を出した。
「もう外、暗いぞ」
窓の外を見ると空は薄暗い。
けどグラウンドに設置されているライトで、グラウンドだけは明るく照らされている。
「兄ちゃん待ってるのか?」
山崎先生が窓際まで近づき、ライトに照らされたグラウンドで、まだ部活を行っている陸上部を見ながら言った。
「違います…光太郎を待ってるんです」
ムスッとした顔で、そう答えた。
お兄ちゃんを待っているなら、もっとウキウキしながら待ってるよ。
「光太郎って、俺のクラスのか?」
「そうですよ」
「付き合ってるのか?」
「は!?」
山崎先生の質問に、ついつい大きな声が出てしまった。
「…何でそんなに驚くわけ?」
窓の外を見ていた山崎先生が、呆れ顔で振り返った。
「だって…光太郎ですよ?」
「は?」
意味がわからないという顔で、山崎先生は首を傾げた。
「…え?」
一緒になって、首を傾げる。
「…いや…そうか…うん。気付いていないならいい」
顔の前で横に手を振り、¨もういい¨というジェスチャーをした。
気付いていないって…何に?