たとえ、この恋が罪だとしても。
「いつから、山崎と仲良くなったんだよ?」
学校を出て駅に向かって歩いている途中、光太郎がそんなことを聞いてきた。
「山崎じゃなくて、山崎先生ね。仲が良いってわけじゃないけど、一応美術部の顧問だから」
「え!?担当教科、化学なのに?」
光太郎も私と同じ反応だった。
「幽霊部員が多いから、美術部顧問って楽なんだって。私が初めて美術室行った時なんて、サボってたんだから」
あの時のことを思い出すと、笑ってしまう。
「真優が先生と仲良くなるの珍しいな」
「だから、仲が良いってわけじゃないんだって。ただ、話しやすい先生だなとは思っているけど」
「ふーん」
また、ムスっとした顔になった光太郎。
一体、何なの?
「これから、俺が部活終わるまで待ってろよ」
「は?嫌に決まってんじゃん。こんなに遅くなるのは、今日だけでいい」
辺りを見渡すと、もう真っ暗。
高校生になってこんな遅い時間に帰るのは、初めて。
「帰り送ってくからいいじゃん。どうせ、家が隣なんだし」
「そういう問題じゃない」
駅の近くまで来ると、辺りは少し明るくなってきた。
人通りも多くなり、たくさんの人が行き交っている。
「じゃあね、涼真!」
ドキ。
駅の改札を通ろうとした時に聞こえた、名前。
涼真ってー…
声がした方向を見ると、人混みの中に見覚えのある顔があった。
「あ、涼真先輩じゃん!」
光太郎も気付いたみたいで、嬉しそうな顔をした。
「涼真せんぱ…」
光太郎が大きな声で名前を呼ぼうとしたが、その声が止まった。
「…」
目の前の光景に、私の心臓も止まりそうになった。