たとえ、この恋が罪だとしても。



あの日から、私はお兄ちゃんを避けている。


頭が良いお兄ちゃんのことだから、もしかしたら私の気持ちに気付いてしまったかもしれない。


そう考えたら怖くて、お兄ちゃんの顔も見れなくなってしまった。



「後でな、真優。お菓子あったら持って来いよ」

「はいはい」



光太郎と家まで帰ってくると、後で光太郎の家で勉強する約束をすると一旦別れた。




「ただいま…」

玄関の扉を開けると、小さな声でそう言った。


お兄ちゃんの靴は…

あの日から、玄関にお兄ちゃんの靴があるかどうか確かめるのが習慣になってしまっている。


…よし、ない。



お兄ちゃんがいないことを確認すると、やっと靴を脱ぎリビングへと向かった。


光太郎がお菓子って言ってたよね?
お菓子のストックなんか、うちに置いてあったかなぁ?


ソファにとりあえず鞄を置き、台所に向かった。


…ん?


ダイニングテーブルの上に、一枚の手紙が置いてあるのを見つけた。


なになに…


手紙を手に取ると、書かれている文章を読んだ。


「光太郎ママとディナーショーに行ってきます…夕飯は、冷蔵庫の中に入っています?」


お母さんの字で、そう書かれていた。


「ディナーショーって…」



光太郎と私が仲が良いように、お互いの親同士も仲が良い。

だから、たまにこうやってお母さん同士が出掛けたりもする。



「って、こんなことしてる場合じゃない」


手紙を元置いてあった場所に戻すと、台所に行きお菓子を探す。




「あった」



食器棚に置いてあったお菓子袋を見つけると、好きなお菓子だけを取った。


とりあえず、お菓子は確保…後は、制服を着替えよう。



バタバタと自分の部屋に行き、部屋着に着替えるとまたリビングへと戻った。



「こんなもんか…」


お菓子も持ったし、教科書も持った。



さ、行こう。



荷物を両手に持ち、靴に履き替えていると玄関の扉が開いた。









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