キス逃げ ―衛side―
その瞬間、一気に体中の力が抜けていったのが分かった。

すごく嬉しくて、隠す事も出来ずに満面の笑みのまま


「本当?!」


って聞き返していた。

それって、よく考えるとカッコ悪いよね。

そんな俺に少しはにかみながら


「うん」


と答えてくれた紗柚を、ギュッと力いっぱい抱きしめていた。

そんな俺を、いつものように突き放す紗柚。

でも、ピンクに染まった頬を俺は見逃さなかった。

「素直になれよ」

そう言うと、もう一度抱きしめなおす。



紗柚は俺の胸の中で、涙を零していた。

制服の端を、キュッと申し訳なさそうにつかんでいる紗柚を、もうだれにも渡したくなかった。


「紗柚」


そう呼ばれて上を向いた瞬間に



―――チュッ


意外と大胆なキス。

目をまん丸く見開いたまま固まる紗柚に


「今のは昨日の消毒」


そう言うと、俺はもう一度唇を重ねた。

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