キス逃げ ―衛side―
「……隙が有り過ぎるのよ」
そう言った紗柚は、少し寂しげな顔をしていた。
最近、紗柚はよくそう言う顔をする。
理由は分からないけど、紗柚のそんな顔は、やっぱり見ていたくない訳で……
腕を絡ませ笑顔で紗柚の顔を覗き込むと
「もう、何で紗柚が怒るんだよ。どうしたら機嫌直るの?」
と、ご機嫌とり。
「知らないっ」
そう言って、絡ませる腕を振りほどきスタスタと歩き出す紗柚。
……やっぱり、女心は分からない。
そう思いながらも、放っておけないんだよね。
「紗柚、ごめんったら」
「……」
黙り込む紗柚に、いつもの作戦。
「じゃあ、21のアイス奢るから!!ねっ、チョコミント」
そう言うと、やっと立ち止まってくれた。
俺を睨みつけながら
「ダブル?」
「へっ?ああ、良いよ。ダブルね」
なんだかんだ、21のアイスに釣られる紗柚は何だか可愛い。
機嫌を直した紗柚の肩に手をかけながら、急ぎ足でアイス屋さんに向かった。