キス逃げ ―衛side―

結局その日は、紗柚と話をせずに帰った。

周りの男子からは【痴話喧嘩かよ】って騒がれるから、さっさと学校を後にしたんだ。

仲直りしないまま帰る事は、今まで無かったから何だか不思議だな。

家に帰ってからも、もやもやは治まる所か1人になった俺に容赦なく襲いかかってくる。

ベットに放り投げた携帯が鳴る度に、ドキッと胸が鳴った。

そして、野郎からのメールと分かると、何故だか落胆している自分がいた。


もしかして……このポッカリと穴が開いた感じ。



―――紗柚の事が好きなのか?



まさかなぁ。

でも、この感情を説明できるものが何ひとつ無かったから。


バカバカバカ。


何を考えているんだ、俺は。

と言うか、いまさら口が裂けても言えない!!!

死んでも言えない。


チキン。


今の俺の代名詞。


「もう寝ちゃおう!!」そう思い目を閉じると、昼間のキス逃げのシーンが瞼に映し出される。


毎回、無料上映中。


エンドレスリピートで……



寝れねーーー!!!!


どうする、俺?!

あいつも毎回こんな思いしてたのか?

1日13回もこれを見ていたのか?


なぜ、我慢できるんだよ。


って、俺どつかれていたな。

そんなノリ突っ込みをしながら、気づいた時にはスズメの鳴く声が聞こえていた。



マジかよ!!!!!


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