キス逃げ ―衛side―

結局一睡も出来ないまま、朝を迎えた。

辛うじて目があいている状態。

そんなへたばっている俺を見て、美依が言った一言。

「衛もかよ!!」

と、大爆笑。


全くウケませんから。


そんな美依をほっといて、俺はバンッと投げやりにカバンを机に置いた。

ため息をつきながら顔をあげると、先に来ていた紗柚と視線が絡み合う。

とっさに逸らしてしまう俺。

この顔、どう考えてもマイッテマスって感じじゃん。


「じれったい」


まだ横にいた美依は、呆れた顔をしながら俺の横の席に座った。


「まだ居たのかよ」

「ずい分な言いぐさね」


相変わらず上から目線かよ。

頬づえをつく俺に

「早く白黒つけないと、逃げちゃうわよ」

「……」

「やっと気づいたんでしょ、自分の気持ち」


コイツ。


完全に図星だったりする俺は、美依の言葉に何も言い返せないでいた。

そんな俺に、トドメの一言。

「あの子、ああ見えてかなりモテるわよ。この前だって、後輩のさと……」

「分かったよ」

最後まで聞く自信がなかった。

知ってるよ、あいつがモテる事くらい。

俺は机の中からノートを取り出すと、何も書いていないページを破りそこにボールペンで走り書きをした。


【放課後屋上に集合】


それを小さく4っつに折ると、美依に手渡した。

「これ、あいつに渡して」

美依は手紙を満足げに受け取ると、

「サンキュ」

と言って、笑顔で紗柚の方に歩いて行った。


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