大好き
2度目の卒業制作も出来上がるまで誰にも見せなかった。

あたしがここで学んだ事や、思い出や感情…

全てをこの一枚に描き上げた。

そして…

最後の日…

ガラッ

扉の音と共にセンセが教室に入ってくる

「今日で…最後だな…」

「うん…」

あたしは静かに頷いた。

「センセ、長い間ホントにありがとうございました」

深々と頭を下げた。

こんな畏まった挨拶は久しぶりで少しくすぐったい

「またいつでも遊びに来いよ」

「うん…ありがと…」

それ以上言葉が出てこなかった。

嬉しくて、切なくて…寂しくて…

「…それ、完成したのか?」

布の掛かったキャンパスを指差し言った。

「うん…」

「見ていい?」

「うん…」

センセが白い布を手に取った。
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