小さな百合の花
今じゃキスがないと物足りない。

人間ってなんて欲張りなんだろう。

昔は一緒にいれるだけで幸せで、一緒にいるだけで満足だったのに。

今では手を繋いで、キスをして、触れていないと気がすまない。

この欲張りが私をダメにするんだと何度も経験してきたのに。


一緒に迎える2回目の冬。

まだ2回目。

私は今、生と死の境目にいる。


彼は最近大学を辞めた。

理由は留学に行くため。

留学に行くために1年間フリーターしてお金をためてから行くらしい。

それを急に告げられた私。

全てに否定してるわけじゃない。

ただ私には多くの疑問と不安が残された。

その中で、普通に接しようとがんばるのにどうしても私は無理になってしまう。

顔は俯き、彼の言葉に黙ってしまう。

彼はこういう私が大嫌い。

それも分かっているのに。


こんな私を見てなにも思わない彼じゃない。

すぐに私の変化に気づき、抱え込んでることを聞いてくる。

けどそれは彼にとってはすっきりするかもしれないけど、私にとっては言わないほうがいいってこともあるんだよ。

それなのに、彼は全てを言えを言ってきた。

だから私は言った。


フリーターという職業が今の世間では冷たいこと。

なんでわざわざ大学を辞めてまで留学に行くのか。

留学の間、私と離れることに不安はないのか。

あなたの将来が不安だから私ががんばらなきゃ。

けど私はあなたのことを愛してる。


思ってること。

本音をすべて彼にぶちまけた。

深夜の電話。

彼の吐息が受話器の向こうで聞こえるけど、私は彼に触れられない。

触れて話していたいのに。


受話器の向こうで彼はため息をついた。


「俺達もう一緒にいれない」
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