小さな百合の花
学校に着くと雨のせいか全く活気が出ていない。

一瞬、来るんじゃなかったと頭をかすめる。

一通り回り終わると彼がどんどん不機嫌になっていくのが分かった。

多分、彼が買ったアイスがコーンからとれてしまったから。
それに活気がなくておもしろくない。


「眠い、眠い、眠い」


の一点張り。


「そんなに眠いなら空き教室で寝る?」


私のそんな問いかけに、彼は目を虚ろにさせながら頷く。

不機嫌な彼が最近怖い。

切れ長の彼の目は気分が沈むともっと切れ長になる。

その目は私を黙らせてしまう。


けど、私は彼に怒られるのが嫌いじゃない。

怒られている間、私を独占しているような気がするから。
きっとそれは間違いなんだろうけど。

けれど、そんな時どうても涙が溢れてしまう。

怖いから。
叱られるのがじゃなくて、嫌われるのが怖いから。

涙が溢れる私を彼は嫌う。

「泣くな」
「別に泣かせたいわけじゃない」

私も彼を困らせたいわけじゃない。
だけど涙というのは自分の気持ちとは裏腹に出るもので、次から次へとあふれ出る。

「ごめんなさい、もう泣かないから。だから嫌いにならないで」

と私はいつも懇願する。

すると彼は切れ長の目を綺麗に細める。
口元も緩めて

「いいよ。分かったからこっちおいで」

そうやって私を腕の中にいれる。
頭を撫でて、肩を抱いてくれる。

そうされると私の涙は止まることを忘れてしまう。

だけど、彼はもう「泣くな」とは言わない。

ただ腕の中で「ごめんな、言い過ぎた」と私の頭を撫でるだけ。
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