小さな百合の花
すやすや寝ている彼のほっぺをつねったり、つんつんしてみる。

だけど彼は起きない。
起きてたとしても面倒くさいから寝続ける。

そんな彼の唇に許可なく自分の唇を重ねてみる。

寝てたはずなのに、彼から応答がくると嬉しくなってもっと深く強く求めてしまう。

彼がやっと目を覚ます。
そしてもう一度、唇を重ね合わせてくれる。

どうして彼のキスは私をこんなにも幸せにしてくれるんだろう。
けど、ここは学校。

分かってる。分かってるんだけど…

私たちは学校で求め合ってしまった。

今日は必要ない机や教壇がごった返す305号室。

その陰に私たちは身を潜め求め合う。

薄暗いけど彼の顔ははっきりと見える。

切れ長の目を細めた私の1番好きな顔。

私を優しく抱きしめてくれる、あの顔。

どうしてこんなにも彼が好きなんだろう。

どうして嫌いになれないんだろう。

彼の首にしっかりと腕を絡めると、私は彼よりも先に逝ってしまった。



305号室。思い出の場所リストに追加。
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