小さな百合の花

「重いことを言うようだけど、人の命を預かるようなバイトだけど大丈夫?」

「それを覚悟で来ました」


責任者と呼ばれるその人は、パン屋の店長とは違ってとてもアットホームな人だった。

目を「へ」の字にして微笑む彼女だったが、絶対怒らせたら怖いだろうなと思わせる目が印象的だった。

それは今となってはよく分かるんだけど。


この面接を受けた頃、世間ではジェットコースターでの死亡事故があった。

だから責任者は私に念を押して聞いてきた。

それでも私はここのバイトを志願した。


他の遊園地とは違って夜遅くまで営業していて、カップルの数多くが
ネオンを輝かせる観覧車やドラマのような海辺の夜景を目当てに訪れる、昔からの憧れの遊園地。


そんな遊園地で働けるなんて素敵すぎる。


私の熱い思いが通じたのか、それともただ人手が足りなかっただけなのか
(絶対こっちの理由が正解だろうけど)

私は見事に遊園地スタッフとして働けるようになった。


ここからが私の大学生活を変えた大きな大きな転機だと思う。



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