黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
ウルフの軍の先頭をきって走ってきたのは、妖艶な美しさを身に纏う女性だった。

それは、ウルフ四天王の一人、ドール。

四天王の中で唯一の女性で、相当な悪女だと聞いている。

馬に乗った彼女は軍の先頭で着いた城の前で艶かしく微笑んで……戦闘の準備をしていたパンターの軍がたじろいでしまうほどだった。



そう……ウルフきっての美女戦士と言われるドールは、その美貌も武器の一つだ。

彼女が虜にした男達を使って、禍々しく残虐な殺戮を繰り返し……
虜にした男達でさえ、用無しになるとゴミのように始末する。

その悪評は事前によく聞いていた。





ドールはパンターの兵士達に、甘くねだるような声で語りかける。


「ねぇねぇ、黒豹さん達。ウルフにこの国とお城、明け渡す気はないかしら? 今渡してくれたら、全然、悪いようにはしないわ。新生パンターの要人として、手厚く扱ってあげる」


彼女はそう言ってウィンクして。

敵のそんなノリに、こちらの兵士達は戦意喪失した者もいるかと思われた。



だけれども……私のレオパードは全くブレなかった。


「この国は決して、お前達ウルフなんかに渡さない。それに……このパンターがお前達のものになった時。それは、現在のパンター国民全員の死を意味する。だから、私はこの国を、この城を、国民みんなをお前達の手から守る!」


そんなレオパードの声に、兵士達も目を覚まして。


「そうだ、この国……パンターはウルフには決して渡さない。この軍は命をかけてでも、パンターをお前達から守る!」


彼らはより一層に奮い立った。
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