黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
私の前に出たドールは、口元を歪めてニヤリと卑しく笑った。


「ふふっ、一丁前にシャインボールなんて作っちゃって。そんなの、私の方が威力も強いし速いわよ」


彼女の右手の平にも、黄色いシャインボールが作られた。

それは私のなんかよりもずっと大きくて輝いていて、破壊力も恐らく、桁違いだ。

あんなのをぶつけられたらと思うと身が縮む。


だけれども……


(よし、気付いていない)


私はドールに気付かれないように、彼女の背後……遥か空の上にいるレオパードに目配せをした。

そう。

この時を待っていたのだ。

この女……ドールが軍を離れ、単独で行動して私だけに注意を向ける瞬間を。



「私達は、もうこれに賭けるしかないもの!」


私が彼女に右手の平のシャインボールを向けた瞬間!

ドールは邪悪な笑みを浮かべ、左手で兵士に合図をした。



すると兵士達はレオパードに向けて飛び矢の攻撃を始めたのだ。


「何!?」

「ふっ、あんた達の考えることなんて、お見通しよ。全く、わざとらしい芝居だったわね。私を軍から引き離して狙い討ちするだなんて。そんな卑怯な手をとる奴らには、痛ーいお仕置きをしなくちゃね」


(くそっ……バレてた)


万事休す……でも、そんなことよりも。


「レオパード!」


私は飛び矢の集中攻撃を受ける彼を見て、血の気が引いていくのを感じた。
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