黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
「すごい、すごいわ! もう城を占拠したのね!」


城に着いた奈美の目は、歪にキラキラと輝いた。

パンターには最早、兵士の姿はなかった。

コヨテと奈美が辿り着いた時にはすでに、門の辺りに立っていたのは幼いジョンとエマのみだったのだ。


「はい。プリンスとプリンセスを捕縛し、僕達がウルフの四天王だと明かしたた途端に、パンターの雑兵達は散り散りに逃げて行きました」


幼いはずのジョンは、しっかりとした口調で奈美とコヨテに伝えた。

エマは少し震えながら、ジョンの服の裾を掴んでいる。


コヨテはそんな兄妹を見て、ニヤリと値踏みするような笑みを浮かべた。


「ほう。流石はヴォルブきっての天才と言われた少年……お前達を起用した私の判断は正しかった。何しろ、敵はお前達には完全に油断して心を開くからな。本当に、良い働きをする。
それでは、敵のプリンスとプリンセスは……」

「はい。豹の念力を封じる縄で捕縛して、城内の部屋に閉じ込めています」

「よし! 我々をその部屋まで案内しろ」

「はい!」


ジョンはコヨテに物怖じもせずに、城の門よりその部屋への案内を始めた。

そう。四天王は……何と、とうの昔にパンター内部へ送り込まれていた。

ジョンとエマの兄妹こそ、ヴォルブ最後の四天王だったのだ。

コヨテは、その二人を孤児としてパンターに送り込んで、様子を映すように玉を持たせた。

そしてスパイとして様子を偵察し、頃合いを見て内部からパンターを崩す……その戦略を立てていたのだった。
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