黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
最終章 幸せな日々



窓の外からはチュンチュンと、雀の囀る声が聞こえてくる。

今日もいつも通りの朝が始まった。そしてそれは、私の怒鳴り声で幕をあける……


「こぉら、晴翔(はるひ)。私の服を返しなさい」

「わぁ、裸星人が追いかけてくる」

「だぁれが、裸星人じゃー!」


私は悪ガキ……もとい、愛息子の晴翔と追いかけっこをする。

何ちゅうデジャヴなの……

あぁもう、イライラする!

こいつ……異世界で一緒に過ごしたジョン、そのものだ。

顔も声も、この悪ガキっぷりも。



その時。

晴翔は大きな腕でひょいと持ち上げられた。


「レオパード……」


私の口から、不意に漏れる。


「はは、やだなぁ、麗。また寝ぼけてる」


そんな私に夫の雹は吹き出した。


「あ、ごめん。つい……」


私はきまりが悪く、頭をポリポリ掻いた。


そして……

「あははは! レオパードって、何? 裸星人、寝ぼけてる〜!」

「あんたはお黙り!」

またも、私の怒鳴り声が家中に響いた。



そう。

結婚して、二人の子宝に恵まれて……幸せな生活を送っていても、つい、私の口からは時折、漏れてしまう。


ジョン、エマ……そして、レオパード。

あの時、あの世界で出会った、かけがえのなく愛しいみんな。


何故なら……今の私のこの、幸せな生活はあの時、パンターで過ごした生活そのものだから。

そう……もう二度とは巡ってこないと思っていた。

幸せで、幸せで……夢のような生活。
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