黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
雹はクスッと笑いながらも、未だにイライラしている私を宥めるように、静かで優しい声をかけてくれた。

「それはそうと、麗。早く服を着て……今日は健くんと奈美ちゃんに会いに行く日じゃなかった?」

「あ、そうだ。遅刻しちゃう!」


私は急いで服を着た。


私と雹は結婚して……健も一緒に暮らそうと思っていたんだけど、彼はどういう訳か、奈美の一人暮らしに上がり込んで一緒に暮らしたいと言った。


最初は私達に遠慮しているのかと思っていたんだけど、彼を見ていると、どうやら奈美にホの字のようで……

奈美の方も、エラく年下の彼に気に入られ、何だか、まんざらでもない様子なのだ。



そんな、姉的にも少し良くない状況はさておき……


「健兄ちゃんと奈美お姉ちゃんに会えるの、すっごく楽しみ!」


玄関先では、未唯(みい)がニコニコと純粋な笑顔を浮かべていた。

彼女はそう……エマにそっくり。

顔も声も仕草も、素直で純粋なところも。

彼女を見ていると、この幸せに私の顔も綻んでくる。
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